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2008-03-01 Sat 23:17
「キーン」というファンの回転音が辺りに響いた。計器類は正常、エンジンが温まればいつでも飛び立てる。僕は無線をのスイッチをONにした。
「コントロール、こちらゼロ。感度は・・・。」 「こちらコントロール、感度良好。もうしばらくそこで待機。」 ノイズはほとんど入らない。僕はしばらくエンジンの音を聞きながら、発進の指示を待つことにした。 コントロールから指示が出た。僕はタキシングしてランウェイに機体を向交わせた。 エンジンを回して指示を待つまでは「飛べること」に対する期待が僕の中で大きくなっていたが、いざ動き出すとそれは不思議なほど消え去って、今は機体の一つの部品のように「機体を正確に無駄なくコントロールする」そのことだけを考えていた。 少し前、整備士の彼が「本来いるべき場所に戻れて嬉しいかな」と尋ねたとき僕は、「機械は喜んだりしない」といったけど、その通りだと思った。今、僕が「嬉しい」という気分の高揚感を感じていないのは「機械の一部」になっているからだ、僕はそう考えていた。 「こちらゼロ、ランニングテイクオフを行いたい。」 昨日から何度かイメージしていたスクランブルのセオリーを実際に行おうと思った。 「こちらコントロール、現在進路クリア、了解した。」 許可が下りた。 ランウェイ手前、本来一度停止するのだが僕はスロットルを少し押し上げた。 エンジン音が大きくなり、機体の速度が増した。そのままランウェイに突入、さらにスロットルを開けた。機体が加速しGが僕の体をシートに押しつけた。コンソールをチェック、異常はなし、すべて正常。スピードは十分、僕はコントロールスティックを引いた。機体が浮いた。僕は機体を1回ひねった。その後に機体を急上昇、高度は5000m。 「こちらゼロ。これより全力飛行にうつる。いったん通信を切る。」 「こちらコントロール。行動可能範囲のマップを送る。範囲内よりは外に出ないように。」 送られてきたマップで範囲を確認した。 「了解。注意する。」 それだけ伝え無線を切った。その後スティックを右に倒し機体をバンクさせる。キャノピーから下を見ると、基地の西側に広がる森が見えた。それがゆっくりと視界を流れていくのを見ながら僕はスロットルを徐々に開けていった。それと平行して機体を水平に戻す。完全に気体が水平になった。スロットルを一杯まで開ける。Gがシートに体を押しつけた。機体の速度は上昇していく。マッハ2を超えた。機体が振動している。カタログスペックではもう少し速度は出るはずだが・・・。もう少しで範囲外に出てしまうため僕はスロットルを閉じた。今度は左にロールする。 「全力飛行終了。機体の運動能力のチェックにうつる。」 機体を水平に戻して、ピッチアップ180°ループした後180°ロール。「インメルマンターン」すぐにロール。その後機体を戻して「バレルロール」。左に倒して180°ロール、ピッチアップして360°ループ。しばらく水平飛行して急旋回。飛行した感じはペダル、スティックとも操作感は良好。ただ気になったのは想像していたより機体が重いと感じられたことだった。施設ではシミュレータしか使ったことがなかったから、実際の機体と差があるといわれたらそれまでだが、操作に対する追従性が若干鈍く思えた。これはなれるしかないだろう・・・。 「テストフライト終了の時間だ。帰還を命じる。」 「了解。」 僕は機首を基地に向けた。 |
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2007-10-22 Mon 21:39
「煙草は部屋の中で吸っても良い。」
スーツの袖に手を通しながら尋ねた。 「もちろんOK。」 彼はズボンのポケットから煙草の箱を取り出すと、それを僕に見せた。顔は笑顔だった。 服を着替えた後、煙草を咥えた。喫煙のペースが早い、いつもは日に2〜3本しか吸わないのだが・・・。時計を見た。フライトまではあと40分、煙草を吸い終えたら行かないといけない。 半分ほど吸ったところで、煙草を消した。ロッカーの中のヘルメットを手に取るとドアを出た。 「グッドラック。」 ジェイクが右手の親指を立てた。僕はそれに対して後ろ向きのまま左手を軽く挙げて答えた。 滑走路に向かう足取りは軽かった。歩調もいつもよりも早い。心はすでに地上にはなかった。 滑走路の隅に置かれたF-13の側にはメカニックと二奈がいた。 「ペダルの堅さ調整しておいたよ。軽くしすぎてないはず。」 彼は笑顔で言った。二奈は腕組みをしてこちらを見ていた。 「機体の調整を兼ねたテストフライトだから、特に言うことはないけど・・・。落ちないように飛びなさい。」 「敵はいないから、いつも通り飛ぶよ。」 とは言ったものの施設ではシュミレータばかりだったから、実際に飛ぶのはいつ以来だろう・・・。 「もう乗っても良いかな。」 二奈は小さくうなずいた。それを見て僕はコックピットに乗り込む。 「ペダルとか堅さの確認してみて。」 機体のスイッチをONにしたあと、左右のペダルを交互に踏んだ。1時間ほど前に踏んだときに比べて軽くなっていた。良い感じだ。 「前の時より良いよ。」 「気に入ってもらってよかった。」 彼は右の親指を立てた。それを見たあと、僕はヘルメットをかぶった。 「エンジン回しても良い。」 「そうね。アイドリングしておきなさい。」 二奈はそういうと彼とともに機体から離れた。少し前の機体では、ジェットエンジンの始動にはコンプレッサーを使用していたのだが、最近はだいたいスタータが装備されているから、始動はとてもスムースにできる。計器をチェックしたあとで、僕はスタートボタンを押した。 |
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2007-09-08 Sat 00:19
食堂は閑散としていた。厨房では何人かが食事の準備をしていた。僕は厨房のカウンタ越しに声をかけた。
「ここで煙草もらえる。」 鍋を混ぜていた女が顔を上げた。他の者は作業を続けていた。 「見ない顔だね。昨日来た新人かい。」 話しながら近づいてきた。 「煙草、ある。」 「何回もいわなくてもちゃんと覚えてるよ。まだそれほど耄碌してるわけじゃないからね。」 エプロンで手を拭きながら言った。 「ここには3種類の煙草しかおいてないからね。もし、自分の好きな煙草があるんならこのノートに書いときな。注文をだしとくからね。」 カウンタの下からノートを取り出すと、僕の前にポンと投げた。 「何でもいいんだ。」 その言葉を聞くと彼女はカウンタの下から煙草のカートンを3つ取り出した。 「この中から好きなのを選びな。」 僕は整備士の彼が吸っていた煙草を選んだ。 「この基地は物品の補充が月2回ある。煙草はそのたびに2カートン渡すことになってるからね。足りない分は休みの日にでも町に出て買うんだね。」 彼女はそういうと僕の選んだ煙草を2カートン渡した。 「ここにライタある。」 「煙草吸うくせにライタ持ってないのかい。」 「どっかに忘れてきたみたいなんだ。」 彼女は左手をズボンのポケットに入れた。 「マッチでいいかい。」 「どちらかといえば、マッチの方がすき。」 僕は彼女からそれを受け取った。カートンのを開け煙草の箱を取り出す。そこまでして、煙草がポケットに入っていることを思い出した。僕は彼からもらった煙草を取り出した。ポケットにねじ込まれていたから、煙草は少し曲がっていた。 「マッチ少し借りてもいい。」 「持って行きな、もう残り少ないけどね。」 彼女はそういうと仕事に戻っていった。 僕はカウンタの一番奥にあるサーバーでコーヒーを淹れて、そこから一番近い椅子に座った。煙草を咥えてマッチをする、リンのにおいが鼻孔を刺激した。大きく吸い込んで吐き出す。その後コーヒーを飲んだ。その後、時計を見た。フライトの予定時間まではまだ間がある。楽しいことをしていると時間はすぐに過ぎていくのに、楽しいことを待つ時間はどうしてこんなに長く感じるのだろうか。逆なら生きていくことはとても楽になるだろう・・・。 コーヒーを飲み終わって僕は席を立った。カップをカウンタに持って行く前に煙草を灰皿で消した。 「カップはここでいいかな。」 カウンタにカップをおいた。 「そこでいいよ。」 彼女は鍋を混ぜながら答えた。 食堂を出ると僕は自分の部屋に向かった。 ドアを開けた。上半身裸の男がそこにいた。 「よう、おまえさんが新しいルームメイトだな。ジェイクだ、よろしくな。」 彼は笑顔で右手を差し出してきた。 「ゼロ。」 短く名前を言うと、軽く握手した。 「変わった名前だな。コードネームか・・・。まあ、名前なんてどうでもいいか。」 彼は右の口角をあげて軽く笑った。 僕は部屋に入った。煙草とマッチを別途においた後、自分のロッカーを開け中に入っているパイロットスーツをとりだした。 |
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2007-08-21 Tue 21:12
「OK。」
彼はトラクターに工具を取りに向かった。僕はポケットから煙草を取り出すと火をつけた。 「そういえば、これ。」 声をかけた。彼は立ち止まり振り向いた。 「ライターだけでいいよ。煙草はあるから。」 自分のポケットから新しい箱を取り出した。 「食堂に行けばもらえるよ。」 「種類は豊富。」 「さあね、気にしたことないから。でも、少なくとも僕が吸ってるのは置いてあるよ。気に入った銘柄があるの。」 「ないよ。何でもいい。」 僕は左手に持っているライターを投げた。回転運動しながら緩やかな放物線を描いて、それは空中を移動した。彼の右手がその運動を制止するまで。 「目は良いんだね。」 彼は口元を斜めにして少し笑った。向きを変えて再び歩き出す。僕は紫煙を深く吸い込んだ。その後で時計をみる。フライトまでは、まだ1時間くらいある。食堂にならコーヒーがあるかな、僕は食堂に向かって歩き出した。 |
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2007-08-15 Wed 21:51
「エンジン、回すよ。」
彼は機体から離れた。僕はスイッチを入れた。電圧計の針が正常値を示した。それを確認した後、僕は手順に従ってスイッチをONに、コンソールのメーター、ランプに異常がないかも同時にチェックした。すべてが正常なのを確認した後、僕はエンジンを起動させた。 高いエンジン音が耳に入ってきた。僕は目を閉じ、それをしばらく聞いていた。頭の中でスクランブルのセオリーを想像しながら。ブレーキのロックを解除してタキシングしたい衝動を抑え込むようにペダルを踏んだ。固さは許容範囲、欲を言えばもう少し柔らかい方がいい、スティックはいい感じ。 「出力をあげるよ。」 ラダー、エルロンの動きをチェックしていた彼に声をかけた。その後、僕は彼が機体から離れたのを確認してスロットルを押し上げた。エンジン音が大きくなる。油圧も上昇。不快な振動などは感じられない。コンソールのランプも異常を示さない。一通りチェックした後パワーダウン。エンジン音は元に戻ったはずなのに、その音は小さく感じられた。許容量を超えた刺激が聴覚神経を壊さないように、耳小骨は振動をそこに伝えないようにする。人間の体は良くできてるな、そう思った。様々なフィルタが標準で備わっている。それらの機能をフルに発揮することができたら、人は煩わしいしがらみを断ち切れるのだろうか。 エンジンをオフにした。コックピットからはい出してハシゴを下りた。ランディングギアが地上に触れる瞬間と自分の足が地面につく瞬間が一番嫌いだ。 「どうだった。」 「何が。」 「機体の感じ。」 「いいよ。もう少しペダルは軽い方がいいけど。」 「もう少し軽くしとくよ。」 「軽すぎるのは、好きじゃないから。飛んだときに不快感を味わいたくない。」 |
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2007-08-06 Mon 20:58
シャッターへ向かい歩いた。途中から彼が僕の隣を歩く。外に出ると僕は彼の方を向いた。
「そこで待ってるよ。」 「あの辺かな。」 彼は目的地の辺りを指さした。 「じゃあ、そこで。」 僕は目的地を目指し歩き出そうとしたけど、あることを思い出して立ち止まった。 「煙草、ある。」 トラクターをとりに向かっている彼に声をかけた。彼はポケットから煙草とライターを取り出すと、それを僕に向かって軽く投げた。それらは緩やかな放物線を描きながら、ゆっくりと回転しながら、僕の方に近づいてくる。僕の目はその動きを確実にとらえていた。左手で煙草を、右手でライターをそれぞれキャッチした。 「流石だね、目はしっかりしてる。」 彼は再び歩き出した。僕は煙草を取り出すと咥えて、火をつけた。ゆっくりと吸い込んで、吐き出す。紫煙はゆっくりを空へ向かいながら、晩秋の空気に拡散していった。 歩き煙草で目的地へ向かった。そこに着くと僕は煙草を靴底で踏んで、空を見上げた。雲の切れ間からこぼれる太陽の光がまるでカーテンのようだった。その下をとりが翼をいっぱいに広げて滑空していた。もうすぐあそこに行ける。トラクターのディーゼル音が後ろから近づいてきた。耳に入る音が徐々に大きくなっていく。それに比例して、僕の気分も徐々に高揚していった。 機体を目的地に運んだ後、彼はトラクターの牽引をはずして少し離れたところにそれを止めた。 「機体の最終チェックをしたい。コックピットに乗ってくれる。」 搭乗用のハシゴをもってこっちに歩きながら、彼は僕に呼びかけた。 「エンジン、回してもいい。」 「もちろん。」 彼はハシゴをセットした。それを使い僕はコックピットに座った。 |


